7月 2018 - 木瓜咲く

2018年7月27日金曜日

拓馬篇-9章◆

羽田校長はひとり、校長室の自席で物思いにふけっていた。彼の頭は現在行われている追試にある。
��ふふふ……よもやあの二人だけの時間ができようとは!)
 追試の監督者は若い男性教師、追試を受ける…

拓馬 長編拓馬

2018年7月26日木曜日

拓馬篇-9章6 ★

拓馬はヤマダと二人きりになる。現在は自分たちを守る者のいない状況だ。
「行っちまったな……」
 脇腹が寒くなるような、心もとなさを拓馬は感じる。
「お前はあいつと一緒にいるべきだと思うか?」
「い…

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2018年7月25日水曜日

拓馬篇-9章5 ★

「さあて、行きましょう」
 赤毛が拓馬とヤマダを抱え、二度目の飛行を行なう。またたくまに中庭に続くガラス戸の前に到着した。拓馬たちは慣れたもので、今度は赤毛にしがみつかなかった。
 拓馬は透明な…

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2018年7月24日火曜日

拓馬篇-9章◇

はじめて人へ変じた異形は小箱の群れを見つめた。役目を終えた道具たちだ。ヤマダという人間がすべての箱の仕掛けを解いた。彼女は解答で使用しなかった木切れを、ふたたび箱の引き出しにもどしていった…

拓馬 長編拓馬

2018年7月23日月曜日

拓馬篇-9章4 ★

「一つ、術者が彼女限定で開けられるよう細工した。判別方法は彼女の掌紋なり生体反応なりあるでしょう。二つ、箱になんらかの術がかかっていて、その術を解除する能力を彼女が備えている。これは稀にいま…

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2018年7月22日日曜日

拓馬篇-9章3 ★

「箱を集めてきましたよ。解答は任せます」
 赤毛は両手に持った箱をヤマダ付近の机に置く。あらたに現れた箱は二つだ。
「二個か……さっきあんたが持ってきたのは三個で、一個はとなりの教室にあったから…

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2018年7月21日土曜日

拓馬篇-9章2 ★

「なあ、俺たちっていつになったらここを出させてもらえるんだ?」
 拓馬は自分たちを監禁した者の縁者に問う。銀髪の少女はヤマダに寄り添ったままだ。
「わかんない」
「あの大男はお前にも教えてないのか…

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2018年7月20日金曜日

拓馬篇-9章1 ★

コンコン、と教室の戸が叩かれた。戸の窓ごしに赤毛の頭部が見える。赤毛が入室してくると、その片腕には箱が二つ抱かれ、さらにその箱の上に箱をひとつ乗せていた。
「一時、置きます。これ以上は運びに…

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2018年7月19日木曜日

拓馬篇-8章6 ★

拓馬は椅子を持ち寄った。自分と、銀髪の少女が座るためだ。拓馬がひとつめの椅子をねむるヤマダの隣りへ仮置きすると、色黒の少女がそこに座った。拓馬は内心、椅子を置く場所をしくじったと思う。もと…

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2018年7月18日水曜日

拓馬篇-8章5 ★

ヤマダはひとつめの箱があった教室を出た直後、廊下の突き当たりへ向かう。
「こういうのは端っこから攻めていこう」
 隣の教室に行くのを赤毛が引きとめる。
「そちらは例の怪物がいました。注意してくだ…

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2018年7月16日月曜日

拓馬篇-8章4 ★

ヤマダは教卓に置かれた木箱を持ち上げた。四方から箱の形状を確認する。上へ下へと観察したところ、上面の問題文が普通に読める位置から見える側面──正面側に、取っ手のついた引き出しがある。
「じゃ…

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2018年7月15日日曜日

拓馬篇-8章3 ★

三人は何秒ぶりかの床の感覚を得た。赤毛が拓馬たちを解放するとヤマダが「本当に飛んだねー」と感嘆する。
「赤毛さんは飛べる術を使ったの? それとも飛べる生き物が人に化けてるの?」
「いまは無駄話…

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2018年7月14日土曜日

拓馬篇-8章2 ★

1
 拓馬たちは職員室へ足を踏み入れた。室内は普段通りに机や事務用品がならんでいる。だがその使用者たちの姿はない。
「先生たちもいねえか。どうなってんだ?」
「災害がおきて、避難したってこと、ある…

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2018年7月13日金曜日

拓馬篇-8章1 ★

拓馬が目を覚ますと頬に冷たい感触があった。視界はひどく低い。床にたおれていた、と気付くのにいくらもかからなかった。眼前には机と椅子の足が複数直立する。その中で、髪の長い女子生徒の横たわるさ…

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2018年7月13日金曜日

拓馬篇-8章◇

一体の異形が覚醒する。異形は自分が寝ていたことを不可解に思った。だがこの場に居心地のよさを感じるせいで、その疑問は簡単に思考の外へいった。
 消耗していた精気が満ちていく。この感覚は故郷のそ…

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2018年7月12日木曜日

拓馬篇-7章6 ★

試験結果がすべて発表され、問題の解説を授業で聞く日々。一通りの解説が終わったあとは、試験で一定の点数未満を取得した者に科目ごとの追試が課せられる。そしてヤマダは英語の追試日を言い渡された。…

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2018年7月10日火曜日

拓馬篇-7章X

月明かりの下、男は家屋の屋根づたいに移動する。現在その筋骨隆々な巨体は物理的に存在しない。おかげで家々を踏み壊さずにいられた。
 男はある家屋を目指した。そこへ到着するまで、己が姿を誇示して…

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2018年7月8日日曜日

拓馬篇-7章5 ★

拓馬たちが大男に大敗を喫したあと、なんの進展もなく時間が経過した。とうとう期末試験の期間に突入する。この時期は多くの生徒が愚痴っぽくなる。だれしも無残な試験結果を残したくないのだが、かとい…

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2018年7月6日金曜日

拓馬篇-7章4 ★

翌週、拓馬は教室で浮かない顔をした三郎に会った。正しくは、拓馬が入室した途端に三郎の顔色がくもった。拓馬を見かけたのをきっかけに、大男の一件が連想されたらしい。
「あの男、めちゃくちゃ強かっ…

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2018年7月4日水曜日

拓馬篇-7章3 ★

公園でヤマダらを待つ拓馬は、ふと気がかりなことを思い出した。一緒にいたはずの、シズカの犬をさっきから見ていない。拓馬は犬の所在を気にしたが、あまり心配にはならなかった。犬が不在になる理由は…

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2018年7月1日日曜日

拓馬篇-7章◆ ★

使い古された音楽が流れる。閉館の合図だ。利用客を追い出そうとする曲を、金髪の少年は不快に感じながら聞いた。少年は仕方なく、机に突っ伏した上半身を起こす。何十分ぶりかに周りを見てみると、図書…

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25-4-20.旧ブログからの引っ越しリンク公開。目次記事のリンクは未修正。お品書きだけは早々に直します。

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